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Fermat's Last Theorem for Amateurs


再びFermatの最終定理[2003.02.23]

Fermatの最終定理(FLT)がなぜ多くの素人数学愛好者の興味をかきたてるのだろうか。 数学と数学史を良く知らないために、一見して問題を理解しやすく、解決できそうに見えるからではないか。

数学の他の有名な問題、例えば、Riemann予想やBSD予想を理解するには、大学の数学専門課程程度の数学的知識が必要であるが、FLTの問題を理解するには、中学または高校程度の数学的知識があれば良い。

しかし、FLTの問題が容易に理解できるからと言って、それを解く(証明する)ことが簡単ということではないことは、数学史を振り返れば、明らかである。 1670年のFermatの注釈入りの"Diophantusの算術"の復刻版の出版より、1994年のA. Wilesによる解決まで(300年以上)の間に、多くの数学者が挑戦してきたが、多くの失敗(証明 の誤り)もあった。 同時に、それぞれの時代の優れた数学者による着実な成果もあった。 例えば、Fermat(n=4), Euler(n=3), Kummer(正則素数冪)、Ribet(Frey曲線はmodularでない)、最後にA.Wiles(Q上定義された準安定な楕円曲線はmodularである)である。

素人数学愛好者がFLTに挑戦しようとするなら、手始めに数学史上に残るこれらの成果を理解することから始めるべきである。
これらの成果を理解できないならば、いくら初等的理論を適用しても、証明できる見込みはほとんどないし、自分自身で書いた証明が正しいかどうかの確認もできないことが確実だろう。 なぜなら、A. Wiles以前の数学者(当然、初等的理論も熟知しているし、平凡な素人数学愛好者よりも優れた能力を持っていたであろう)が、その当時の最先端の知識を持ってしても(当然、初等的理論内でも)FLTを証明できなかったからである。

独力でFermat,Euler,Kummer,Ribet,Wilesなどの成果を導けるほどの能力があれば可能性は残っているが、それでも時間が掛かり過ぎてしまう。 人生は有限であるので、限られた時間内に意味のあることを成し遂げるには、過去の成果を学んで、利用する以外にないと思う。 幸いなことに、FLTに関するいろいろな本[例えば、1,2]が出版されている。

FLTの一つの証明ができたということから、より簡潔な別の証明が得られる可能性も十分ありうる。しかし、素人数学愛好者が(成功の見込みが著しく少ないと思われる)難しい問題に取り組むとしたら、FLTではなく、Riemann予想,BSD予想,ABC予想などの問題に挑戦する方がもっと面白いのではないだろうか?

余談になるが、素人数学愛好者のFLTの誤証明と似たような例としては、数学では、"任意角の三等分は作図可能である"(不可能性が証明済み)、"平面上の任意の地図は4色で塗り分けできる(四色問題)"(正しいことは証明済み)などの誤証明が有名である。 また、物理学では、"相対論は間違っている"(相ま論)というものが有名である。 しかし、不思議なことに"量子論は間違っている"(量ま論)というのは聞いたことがない。 なせだろう?

参考文献




Last Update: 2005.06.12
H.Nakao

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