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Decomposite Congruent


分解合同[2005.02.27]

平面上の有限個の多角形P1,..,Pnが多角形Pの分解であるとは、
    (i) P = P1∪...∪Pnであり、
    (ii) 各i,j (1 <= i < j <= n)に対して、Pi∩Pj⊆∂Pi∩∂Pjである
こととする。
ここで、(ii)は添字が異なる多角形PiとPj(i!=j)は、交わらないか、または、その境界線(その辺または頂点)上でのみ交わることを意味する。
このとき、P = P1+...+Pnと書く。

平面上の多角形Pが多角形Qに分解合同(decomposite congruent)であるとは、多角形P,Qの有限個かつ同数の多角形への分解
     P = P1+...+Pn,
     Q = Q1+...+Qn
が存在して、各i(1 <= i <= n)に対して、PiとQiが合同、つまり、
    Pi ≡ Qi (i=1,...,n)
であることとする。

多角形Pが多角形Qに分解合同であるという関係は、同値関係である。

また、以下の補題1,2が成立することは、図1,図2から簡単に分かる。
・[補題1]任意の三角形は、底辺が同じ長さで高さがその(1/2)倍である長方形に分解合同である。
・[補題2]任意の長方形は、面積が等しい正方形に分解合同である。
[図1]
図1
[図1の説明]
△ABCに対して、ABの中点D,ACの中点Eを取り、頂点AからDEに下ろした垂線の足をHとする。△ADH≡△BDF,△AHE≡△CGFとなる点F,Gを取ると、△ABCは長方形FBCGに分解合同である。
[図2]
図2
[図2の説明]
長方形ABCDの中心(ACとBDの交点)をO、AB=a,AD=bとする。AD,BC上にそれぞれ点E,Fを取り、線分EFの中点がOであり、OE=OF=sqrt{ab}/2となるようにする。また、EF上に点H,J、AD上に点G、BC上に点Iを取り、GH=IJ=sqrt{ab}/2, ∠GHI=∠IJFが直角になるようにする。 さらに、直線EF,AD,JK,BC上にそれぞれ点M,P,K,Nを取り、△GHE≡△PME, △IJF≡△IKNとなるようにする。さらに、直線MP,KNの交点をLとする。
このとき、長方形ABCDは正方形JKLMに分解合同である。

よって、以下の定理1,2,系3も容易に証明できる。
・[定理1]面積が等しい任意の2つの長方形は、互いに分解合同である。
・[定理2]面積が等しい任意の2つの三角形は、互いに分解合同である。
・[系3]面積が等しい任意の2つの多角形は、互いに分解合同である。

分解合同の概念は、立体図形である多面体にも拡張できる。
多面体の分解合同は、多角形の分解合同とは少し違っていて、体積が等しい2つの多面体で、分解合同でないものが存在する。1900年にMax Dehnによって、体積が等しい正四面体と立方体が分解合同でないことが証明されている(Hilbertの第3問題[1])。

ここでは、縦,横,高さがそれぞれ2,1,1の直方体Pが一辺の長さが2{1/3}の立方体Qに分解合同であることを示す。

縦,横,高さがそれぞれ2{1/3},4{1/3},1の直方体Rに対して、 図3より、PはRに分解合同である。
[図3]
図3
[図3の説明]
直方体ABCDEFGHは、AB=AE=1,AD=2である。 線分IJの中点が長方形ABCDの中心に一致し、IJ=2{1/3}, NM=KL=4{1/3}/2, ∠JLK=∠INMが直角になるようにする。
AB=1,AD=2である長方形ABCDは、同じ面積2を持つNS=4{1/3},NU=2{1/3}である長方形NSTUに分解合同である。
よって、直方体ABCDEFGHは、高さと底面積が等しい直方体LSTUVWXYに分解合同である。
また、同様の方法で、NV=1,NS=4{1/3}である長方形NVWSは、一辺が2{1/3}である正方形に分解合同であることが分かる。
今度は、底面UVWSの面積が4{1/3},高さNU=2{1/3}である直方体NVWSUYXTを考えると、この直方体Rは同じ体積を持つ立方体Qに分解合同であることが分かる。

よって、縦,横,高さがそれぞれ2,1,1の直方体は、(同じ体積を持つ)1辺が2{1/3}の立方体に分解合同であることが証明できた。

さらに、以下の定理4,5,系6,7も容易に証明できる。
・[定理4]平行六面体は、底面が平行六面体の底面に合同で、高さが平行六面体の高さに等しく(体積も等しい)、底面と4つの各側面が成す角が直角であるような四角柱に、分解合同である。
・[定理5]体積が等しい任意の2つの平行六面体は、互いに分解合同である。
・[系6]体積が等しい任意の2つの直方体は、互いに分解合同である。
・[系7]任意の直方体は、同じ体積を持つ立方体に分解合同である。

参考文献



Last Update: 2005.06.12
H.Nakao

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